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2/25 新刊書「ディープ・イノベーション」を読んで    和邇浩一

本書を読まずとも日本の置かれた現状や技術者がなすべきことについて憂慮する読者も多いだろう。しかしでは自分が何をできるかということになると、うまく言い表せないのではないだろうか。
今、この国では働き方改革の名の下に時短と効率化の風が吹き荒れている。一見、QOL向上の切り札にようにも見えるが、実は働き方改革などは目的ではなく、また手段ですらない。単なる労働環境、周辺条件の話である。
本書でカルロス・アラウジョがCeRAMの可能性を見出したときに「死んでもいいからやり遂げよう!」とメンバーを鼓舞しているが、それを文字通り実行してもダメなことはカルロス自身が本書で明らかにしている。もちろん表面だけの「働き方改革」を実行したら本当に日本は沈没する。ではどうするのか。その答えこそが本書でいうディープイノベーションであろう。
表面的な改善や積上げ的な改良とは一線を画した、社会的なニーズから生まれる真の技術革新を生んできた事例が当事者の言葉として語られている本書は、この国の現状を憂いる、特に若い読者にお勧めしたい。ディープイノベーションとは何か、あたかも読者自身が体験したかのような現実感を伴って理解できるであろう。