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2/1  新刊書 「ディープ・イノベーション:起業工学が開く人類の新しい地平」 刊行にあたって  古池進

本書の著者の一人として、発刊にあたり一言所感を述べておきたい。

本書は, 人間の生き方、考え方、などの価値観を根本から変える新しいパラダイムを生み出す源泉として、“ディープ・イノベーション”を定義し、それを可能ならしめる基本的な要素について述べることを目的としたものである。

 本書では、3つの事例を紹介し、この ディープ・イノベーション とは何かについて考察を加えている。いずれの事例でも、イノベーションの三つの基本要素である、ニーズ、シーズ、アーキテクチャーの深い思索が前提になっている。この一連の事例展開の中で、カルロス・アロージョ氏は、JR /SUICA カードの実現とそれによる新しい社会システムの実現に導いたFeRAMの発明から究極の不揮発性メモリ・CeRaMのシーズの展開について述べている。読者諸君にとって最も重要なことは、このCeRAMはFeRAMの発展形では無いということを理解することである。これは、眞にパラダイムシフトを起こす ディープ・イノベーションの実践事例なのである。何故、彼がこれを達成できたのか? それを知っていただければ本書の著者として望外の喜びである。彼の深い知識と洞察力はすべての基本であることは言うまでもないが、加えて、彼には自分で気づかない大きな器量として多様性というものが彼の身に備わっていただのはないかと私は思う。多様性を大切にすることは、必ずしも効率が良いこととは限らない。人々にとっては、どんな完成度の高い優れた独裁国家よりも自由を愛することのできる国家のほうが好ましい。多様性を受け入れることは民主主義の要諦ではないだろうか。効率的では無いかも知れないが健全なのだ。それ故に世界の叡智が彼の下に集まりデープ・イノベーションを達成出来たのだと私は考える。古池顏写真 (2)

此れからのカオスの世界において、世界の若い起業家はイノベーションのテクニックを学ぶ暇があるなら、多様性の認知力を磨いてほしい。振り返ってみると、日本の現状は、多様性を叫ぶ論者ほど自分の事になると認めない偽物の政治家・経営者・マスコミに毒を流す評論家に溢れている。しかし、日本でも徳を求める老舗経営、倫理観を大事にした多様性を重視した賢人が産官学にいたことを忘れてはいけない。日本の若き起業家がこの良き伝統の後継者であれば、ディープイノベーションが起こり、再び日が昇ることを確信する次第である。